白洲正子自伝

白洲正子白洲正子自伝』、新潮文庫、1999

白洲正子については、「趣味のいい人」という以外にほとんど知識がないのだが、この本はおもしろかった。いわゆる自伝の一般的な形式、つまり年代記のようなものではなく、自分の回りの人々や、折々にあった出来事が淡々と綴られているだけである。

戦前の典型的な上流階級の生活がわかって、おもしろい。なにしろ樺山資紀と川村純義が父方と母方の祖父なので、本人は東京育ちとはいえ、ほとんど薩摩の侍みたいな人である。率直、正直、容赦がない。まあ猛女、烈婦というようなもの。それに加えて小さい頃から教養をたたき込まれているので、ふつうのことではたじろがないような人である。まあダンナが白洲次郎だったから、平仄があったのだと思うが、周りの人々はいろいろとたいへんだったのではないかと邪推する。

いろんな意味で痛快な人生を送っている人。いまどきの金持ちでこういう人生を送れる人はなかなかいないだろうと思う。