おどろきの中国
橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司『おどろきの中国』講談社現代新書、2013
橋爪、大澤、宮台の社会学者3人による中国についての鼎談。
中国がどういう「原理」で動いているのかを説明する第1部と、毛沢東時代を考察する第2部は、非常に勉強になった。鼎談本なので、いちいち文献的証拠が出ているわけではないが、橋爪の説明はおおよそ正しいことを言っているように見える。これである程度の説明になっている。
日中関係史に触れている第3部と、今後の展望をしている第4部は、それに比べると、やや説得力に欠けた部分がある。それでも、ドイツの「責任論」を日本の議論と対比させている議論は説得力がある。台湾や北朝鮮について言及しているところは、半信半疑になるような部分もあるが。
全体として、理解しにくい中国を説明している好著。しかし、これを中国人や、中国研究者がどのように捉えるのかはまた別の話。『ふしぎなキリスト教』批判の例もあるので、そういう見方を別の人から聞きたい。
びわ湖ホール ジークフリート
ワーグナー「ジークフリート」
ミーメ:高橋 淳
さすらい人:ユルゲン・リン
アルベリヒ:大山大輔
ブリュンヒルデ:ステファニー・ミュター
びわ湖ホール、2019.3.3
これは先週、びわ湖ホールで行われた公演。2日目に行った。はっきり言って、あまり出来はよくない。歌手がやはりいまいち。ジークフリート役のフォイクト、声が小さい。ミーメの高橋淳は、まあまあだけど、すごくいいとは言えない。あとはうーんという感じ。特にオーケストラ、音を抑えすぎというのはよろしくない。
舞台は、幕に映像を投影する方式。もうちょっと工夫してほしかったと思うけど、ファフナーは、しっぽだけを実物(塩化ビニール?の空気が入ったしっぽがニョロニョロ)で、頭部分は映像。これはおもしろかった。しかしジークフリート、心臓に剣を突き刺すことができず、しっぽしか刺してないんだけど、いいのだろうか。そういえば、森の小鳥は、姿を現さず、声だけ。
したがるオスと嫌がるメスの生物学
宮竹貴久『したがるオスと嫌がるメスの生物学 昆虫学者が明かす「愛」の限界』集英社新書、2018
著者は生物学者。対象は、昆虫の生殖。非常におもしろい本で、著者の研究対象を通じて、生物の交配行動がわかりやすく説明されている。
著者の主要な研究対象はミバエ。小さいハエで、短い周期で繁殖するので、遺伝形質を観察しやすい。
昆虫でも、生殖行動はヒトや哺乳類と驚くほど共通点が多い。オスが交尾に積極的なところ、夕方、カゲロウなどの昆虫が群れになっているのは、交尾のためだというのはこの本で知ったが、あれも、自然選択に影響されている。時間が早いと、天敵に食われる確率が高くなり、グズグスしていると交尾の機会を逃してしまう。実験室環境では、天敵の脅威がなくなるので、交尾を早くする方向に交尾周期が変わっていく。タイミングが重要ということ。
どの生物でも基本的な性向の方向付けは変わらない。自然選択のきめるとおり。