したがるオスと嫌がるメスの生物学

宮竹貴久『したがるオスと嫌がるメスの生物学 昆虫学者が明かす「愛」の限界』集英社新書、2018


著者は生物学者。対象は、昆虫の生殖。非常におもしろい本で、著者の研究対象を通じて、生物の交配行動がわかりやすく説明されている。

著者の主要な研究対象はミバエ。小さいハエで、短い周期で繁殖するので、遺伝形質を観察しやすい。

昆虫でも、生殖行動はヒトや哺乳類と驚くほど共通点が多い。オスが交尾に積極的なところ、夕方、カゲロウなどの昆虫が群れになっているのは、交尾のためだというのはこの本で知ったが、あれも、自然選択に影響されている。時間が早いと、天敵に食われる確率が高くなり、グズグスしていると交尾の機会を逃してしまう。実験室環境では、天敵の脅威がなくなるので、交尾を早くする方向に交尾周期が変わっていく。タイミングが重要ということ。

どの生物でも基本的な性向の方向付けは変わらない。自然選択のきめるとおり。