純米酒を極める

上原浩『純米酒を極める』光文社知恵の森文庫、2011


著者は元は醸造試験場にいて、現在は酒造りのアドバイザーなどをしている人。これはプロの書いたプロ用の本。

著者は、酒は本来純米酒であることが当然であり、アルコール添加は、戦後の食糧難の時期に、酒の生産量を増やすために行われていた便法。それをいまでも続けていること自体がおかしいという。

考えてみれば、ワインにアルコールを添加しているなどということはありえないので、酒はコメだけからつくるのが当然といえば当然。酒造家の中には、アルコール添加はそれ自体は悪ではなく、それによってうまくなっているという意見があることは知っている。しかし、著者によると、そういうケースもあるが、ほとんどは酒造家が手間を省いたり、安く作るための口実にしかされていないことばかりなので、すっきりやめるべきだという。

日本酒の実際の工程について、非常に詳しく書いてあり、店や酒造家が使っている言葉がほとんど説明されている。この本は、知らない人が一度読んでわかるようなものではなく、ある程度知識のある人がさらに知識を深めるために読む本。主張自体は納得がいったし、この本で紹介されている酒造家の酒にはずれはなさそう。今度、とりあえず紹介されている酒を何か買ってみる。