風と木の詩 #15-16
竹宮恵子『風と木の詩』 #15-16
これが最後の2巻。読んでいてつらい。
厳しい生活をしているセルジュとジルベールを見つけたのは、パトリシア。パトリシアはなんと新聞記者になっていた。はっきりセルジュに愛を告げるが、当然受け入れられない。それでもパトリシアと、兄のパスカルの、セルジュへの思いはあいかわらず。
ジルベールはとうとう顔役にアヘン漬けにされてしまい、ボロボロになる。そんなジルベールとセルジュを拾い上げるのは、あのボナール。セルジュは、一時、ジルベールをボナールの手元に残しておこうとさえするのだが、ジルベールはセルジュのところに戻ってしまう。
16巻、パスカルは、セルジュに対して「あの時おまえたちを逃がしたのは間違いだった。このままでは二人ともダメになるから別れろ」とさとす。もちろん、セルジュは受け入れられない。
いよいよ薬でズタズタになったジルベールは、自分を買って引き取りたいという男の言葉にすがって、逃げる。もはや死を覚悟しているジルベール。自分を買い取ろうとしている見知らぬ男に、オーギュストの幻を見て、自分から馬車に飛び込んで轢かれてしまうジルベール。
完全に抜け殻になってしまったセルジュを引き取りに来たのは、従妹のアンジェリン。これはパトリシアが知らせた。アンジェリンは婚約をオーギュストに破棄されてから、子爵家の番だけをしてすごし、母親(つまりセルジュの叔母)は田舎に引きこもっていた。懐かしい子爵家で、ピアノをひきながら、ジルベールのことをセルジュが思い出す場面で終わり。
番外編がついていて、これは数年後の話。セルジュはピアニストになっているが、登場するのはロスマリネとジュール。大学を卒業する時期になっているが、昔の二人のこと、そしてオーギュストとジルベールのことをなつかしく回想する。
昔、読んだ時のの記憶が薄かったが、十分に味わって読めた。ジルベールは大人にはなれない運命。美しいままで死んだ。きれいなものはなくなってしまうのだ。