国盗り物語

国盗り物語』1-4、司馬遼太郎新潮文庫、1971

いまさらという感じだが、読みました。確かにおもしろい。おもしろいが、前半の斉藤道三編と後半の信長、光秀編で話がきれいに分かれてしまっている。題名も前半にはぴたりとあてはまるが後半にはどうか。というようなことを考えていたら、著者あとがきに、もともとは道三だけを扱って終わりにするはずで、題もそのつもりでつけたが、編集者の要望で話を続けたのだ書いてあった。道三のまいた種は信長と光秀によって育てられたのだから、そこまで書いて話が完結するのだという話はわかるが、明智光秀は自身が新しい構想をもって戦国時代を変えようとした人ではなかったのだから、信長はともかく道三の種を光秀が受け継いだという考えはちょっとどうかと思う。小説全体としてもやはり二つの話を無理やりくっつけたという感じは否めない。
しかし前半の道三の話がとてもおもしろい。油売りが美濃一国を切り取る手腕が細かく描かれていて、息をつかせない。大河ドラマでは、油売り時代の妻、お万阿が途中からどうなっちゃったのかよくわからなかったが、こういう形でちゃんと書いていたわけですね。また後半の光秀から見た信長像というのはそれはそれでおもしろく書けているので、結果としてはアリ。まあ司馬遼太郎の筆力だから、結局おもしろくなってしまうのだが。あとがきを細川幽斉のことで書き起こしているのも余韻があってよし。