天皇・反戦・日本

天皇反戦・日本』浅羽通明幻冬舎、2007

副題は「浅羽通明同時代論集治国平天下篇」となっていて、浅羽通明の評論の中で政治関連のもの、題名どおり主に天皇反戦、日本に関する文章をあつめた本。浅羽が個人的にニューズレターを出している(いまどきハードコピーを郵送)というのはこの本ではじめて知った。
内容は浅羽らしいちょっとひねったスタンスで書かれているが、天皇人間宣言に関して、それが西洋的な一神教の神であることを否定したにすぎず、伝統的な神聖性を否定したものではないとする文章は参考になった。ラジオ体操の歌を使った9.11テロをネタにした替え歌には笑った。憲法に思想宣言など不要だから前文は削除しろという考え方には同意する。国籍離脱の自由を明記した憲法は世界的にみて珍しいという事実は知らなかった。それにしても香山リカなんかいじって遊ぶ分にはいいが、社会的な発言ではアホなことしかいわないんだから相手にしなければいいと思うが。あと、「ジョゼと虎と魚たち」が同和地区の話だ、という説はどうかなあ。そうではないと断言できる材料はないが、特にそうだと示唆させるようなエピソードは映画の中にはなかった(単に貧しい家庭というだけ)だったと思うが。
全体としては理屈のもっていき方がおもしろい本だった。さらに続刊が出るということなのでそれも買おう。