キッチン・コンフィデンシャル

『キッチン・コンフィデンシャル』アンソニー・ボーデイン(野中邦子訳)、新潮文庫、2005

著者については、ディスカバリーチャンネルの番組で世界のいろんなところで食べ歩きをしている人、という程度の認識しかなかったが、この本はおもしろかった。内容は著者の料理人としての履歴書であり、同時に題名のとおり、レストランのキッチンの内幕に着いての暴露本にもなっている。戦場のようなキッチンのようす、体力と精神力をすりへらすコックの仕事、そこから出てくる料理、どれをとっても著者の経験の豊かさが文章を通じて感じられる。また料理人という職業に対する尊敬を新たにさせられる。
この本の翻訳はたいていの作業ではないだろう。食材や料理、土地、いろんな俗語が頻出する。それをきちんとした日本語に仕立て直す訳者の力量にも脱帽。