親米と反米

吉見俊哉『親米と反米』、岩波新書、2007

タイトルから連想されるような親米意識と反米意識を対比的に描くような本ではなく、親米と反米の両方の契機を含みながら、日本社会でアメリカという存在がどのように内面化されていったかを描く本。近代性、占領、米軍基地、ライフスタイルといった面から、膨大な文献を引証するかたちで、アメリカの内面化の過程が立体的に描き出されている。基本的に良書だと思う。
ただ、「天皇マッカーサー占領体制の結託」のような話は、日米関係の話としてはそれなりに筋が通っているのだが、それに比べるとマイホーム化を扱った章は、それが「国としてのアメリカに対する意識」とどう関係があるのか、いまいちきちんと説明されていないと思う。生活様式としてのアメリカ化は、対米意識と必ずしも結びついていないことは、著者が例として引く韓国、台湾、フィリピンなどでもそうであり、議論に無理がある。
個人的には基地が日本文化に与えた影響や、米軍基地反対運動の内幕などについて書かれた章がおもしろく勉強になった。ただ、最初と最後の章で、いかにも反米左翼めいたアジテーションをさかんにやるのは、著者が著者だけにしょうがないが、勘弁して欲しいと思う。