羅生門

芥川龍之介羅生門


ひさしぶりに読んだ。やはりこれは名作。

主人公の下人、死体の髪を抜く老婆に道徳的な怒りを燃やしているが、これまでどうやって食べていたのか、よくわからない。髪を抜かれている死体になった女は、生きている時には蛇の切り身を干し魚だと言って売っていたということだが、まあ、このくらいは可愛いもの。そんなに悪逆非道な行為とは思えない。

この話がよくできているのは、下人の心理がさくっと変わってしまうところの描写。これはうまいと思う。

この版(ほるぷ出版から1976年に出ている「新選 名著復刻全集 近代文学館」)では、終わりのところが「下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急いでいた」となっている。自分が昔読んだ版では、「下人の行方は誰も知らない」となっていたような気がするが、どこで版が変わっているのか。