中国文学を学ぶ人のために
興膳宏(編)『中国文学を学ぶ人のために』世界思想社、1991
中国文学の入門書。定評のある本なので読んでみたが、非常におもしろかった。
この300ページあまりの本で、中国文学の全部の分野を時代に分けて紹介するのは大変なことだと思うが、やはり中国文学は歴史的伝統の上に理解されなければならないもの。
総論と詩文(先秦、漢・魏・六朝、唐、宋、元・明・清)、文学評論、詞、戯曲、小説、文学と書画、古典文学と近代文学の章がたてられている。やはり中国文学の中心は圧倒的に詩。これが中心で、他の分野は詩の伝統の上に成り立っているもの。
現代文学はそれから外れているように見えるが、やはりそうではなく、過去の詩の蓄積の上につくられている。文学的伝統があるところではどこでもそういうもの。
しかし、これを見ると詩がわからないと中国文学がわからず、これに取り付くためにはある程度の勉強が必要。ちょっと読んでわかるかといえば、なかなかむずかしい。日本人は詩を理解するために苦労がある。まして、中国語や漢字がわからない他の文化はなおさら。入ればいい世界だが、そこまでの道が険しい。