頭髪の故事

魯迅『頭髪の故事』


これは掌編。魯迅が中学の校長をしていたときのことから引いたエピソードらしい。つまり私小説

主人公は、双十節のことを語っているので辛亥革命よりあとのこと。革命よりそれほど時間がたっていない時に設定されている。しかし主人公の悩みは、断髪を許すかどうか。革命以後であっても、断髪はまだ社会的に許されないことになっており、主人公もそのことでたびたび周りと争っていた。

しかし、自分が校長をしている中学の生徒が髪をきっていいかどうかを尋ねたときには、主人公は「まだ切るべきではない」という。それが受け入れられないことをよく知っているから。

「言っていることとしていることが違う」問題だが、それを自分が突きつけられている矛盾として自省的に考えるところが魯迅私小説とはいっても、日本の私小説とは非常に違うもの。