イスラーム主義

末近浩太『イスラーム主義 もう一つの近代を構想する』岩波新書、2018


著者は、中東地域研究者。主なフィールドはレバノンとシリア。

イスラム主義が、ヨーロッパの侵入とその後の混乱打開のために生み出されたもので、一種の「逆の近代化」だというのはそうだろう。事実の整理はきちんとしていると思う。

しかし、著者は、イスラムを自分の信条に引き寄せて理解しすぎ。ハーバーマスなどを持ち出しているが、分析者である著者はともかく、ハーバーマスイスラムとは真逆のものだということくらい、わからないのか、あるいははっきり言ってしまうと都合が悪いので言わないだけなのか。

ガチのイスラム教徒でもなく、ヨーロッパ的信念にもとづいてイスラムを「理解」しようという良くも悪くも地域研究的な立ち位置。まあ、これでは肝心なことはだめだろうという気がする。