言ってはいけない中国の真実 橘玲の中国私論

橘玲言ってはいけない中国の真実 橘玲の中国私論』ダイヤモンド社、2018


橘玲の中国論。これはおもしろかった。

著者の中国論の基本は、「中国は人口が多すぎる社会」。これがあるから、中国社会では、中央の権力が末端に浸透することがない。日本とは統治構造がまったく異なっている。中央権力は専制的でなければならないし、末端を全部支配することは不可能なので、金を納めればあとは放置するしかない。

権力が末端を支配できないので、結局社会的結合は私的なものにしかならない。それを示すのが、宗族、幇、関係。血族か、疑似血族的集団でなければ信用できない。社会的ネットワークはこれを基盤にしないとできないので、法による支配などは無理。

私的な関係性からしか社会的信頼が構築できないので、秘密結社や黒社会が重要になる。中国共産党も一種のそれ。

中国の経済発展の方法について説明した章もおもしろかった。結局、これも私的結社が勝手にやっていること。中国共産党は、その上前をはねている。というか、私的結社は儲けようとすれば、共産党と協力しなければできないので、両者は運命共同体

非常に蒙を啓かれる記述が多く、それを支えているのは著者の幅広い読書。ざらっとした理解をするために非常に役に立つ本。