アホの壁

筒井康隆『アホの壁』新潮新書、2010


筒井康隆の無茶エッセイ。だいたいは、筒井康隆の過剰な性格から来る、無茶だと思うが、洞察自体はまあ納得。

おもしろかったのは、「戦争はなくせるのか」というおはなしで、もちろん、「できないことはないが、まあむりでしょう」という結論。引用されているのは、フロイトアインシュタインの往復書簡。

フロイトの言っていることが、非常に納得がいくもの。戦争というか、戦いの生物的機能をとりあげて、人間だけが例外ということはありえないと言っている。そして、人間の戦いが大規模で残酷な理由は、道具があるから。また群れで戦っているから。これも非常に納得。さらに精神の卓越ということを言っている。精神の働きが暴力を支えていることで、権力が生まれている。これも非常にあたり。

その後は、エロスとタナトスとか、そういう議論になっていくので、そこはあいかわらずだなーという印象。エロスが攻撃衝動を抑制とか、あまりありそうでなく、むしろ逆なのではないか。

筒井康隆本人は、教育の機会均等によって戦争をなくせる(わけはないが、そこに期待する)と書いていて、それはないだろうと思うが、そういうふうに持っていかないといけないのだろう。フロイトアインシュタインの元本を買わねば。