いちばんやさしい美術鑑賞

青い日記帳『いちばんやさしい美術鑑賞』ちくま新書、2018


これは驚くべき本。初心者用の美術鑑賞ガイド本なのだが、書いている人はただの美術好きの素人。ブロガーだという。しかし、その辺にいる美術評論家や美術専攻の大学教員などよりも、はるかにわかりやすく、かつ内容の濃い解説本になっている。

しかも挙げられている作品は、すべて日本のどこかの美術館に所蔵されている作品に限定されている。つまり、努力すればここに紹介されているすべての作品を見ることができる。しかも作品の幅が非常に広く、グエルチーノ、つまりルネサンスから現代まで、西洋美術だけでなく、日本美術もとりあげられ、存命の作家(池田康晟)までリストにあがっている。

作品の成り立ちや時代背景、同時代や先行作品との関連まできちんと書かれており、ぜんぜん間違いがないということはないが(ピカソの絵と子供の絵との関連は、ちょっと言いすぎ)、十分に水準をみたしている。

これだけの本が職業ではない素人に書かれたというのがすごいこと。著者は1968年生まれ、國學院大學文学部卒、年間300回展覧会に行くといっている。ここまで書くのであれば実名でやったほうが、とも思うが。