学歴フィルター

福島直樹『学歴フィルター』小学館新書、2018


企業が採用時に学歴でフィルターをかけている問題についての本。以前は、「学歴で差別しません」といくつかの企業が言っていたが、もちろんそんなことが現実にあるわけはなく、どこの企業も学歴で応募者を選別している。

著者は、「学歴は、本人の能力ではなく、社会的に決められたものだから差別」といいたいらしい。著者が農家の出身で、上智大学から広告代理店に行ったという特殊経歴の人だからそう思っているらしいが、奨学金を支給しろという話であればともかく、大学で採用が決まるのが差別だとは片腹痛い。

著者は外国でも、大卒かどうか、大卒なら大学の名前で、採用が決まっていることを知らないわけはないだろう。大学の名前を差別扱いされてはたまらない。ネームバリューのある大学以外にもいい人材がいるというのは当然のことで、その人達は、自分に合った就職先を探せばいいだけのこと。有名企業にみんなが殺到していることそのものが変で、それを問題にせずに、学校歴社会を問題にするのがおかしい。

著者の解決策というのが、大学4年12月1日から就職活動をはじめさせろというもので、なんの効果もないだろう。就職協定など紳士協定にすぎない。企業が採用者、応募者の出身大学を公表しろというのは、まあいいのではないか。

現実には企業の競争と利害関係を理解しなければなにもできない。そんなことがわからないようでは・・・。