マンガ水木しげる伝 下

水木しげる『マンガ水木しげる伝』下(戦後編)、講談社漫画文庫、2004


こちらは水木しげる自伝の下巻。貸本時代からあとのことを描いているのだが、これはもはやマンガ家の伝記ではなくなっている。もちろん仕事のことも書いているのだが、それはぜんぜん中心ではなく、「忙しかった」ということが書かれているだけ。

水木しげるがここで書いているのは、ニューブリテン島への度々の再訪のこと、中国、ニューギニア、南米などの非文明、半文明社会への旅行とそこでの自分が考えたこと。

水木しげるは、死の世界と向き合ってきた人で、彼が交信しているのは霊。食欲も性欲も非常に強いひとで、エネルギーで満ちている人。そういう人が、霊と直接につながっているところがおもしろい。

マンガほかの著作は単著1000冊以上、共著含めて1603冊というとんでもないもので、それだけ仕事に打ち込んでいたのだが、それを支えていたのは、本人のエネルギーと霊の世界とのつながり。現代にはこういう人はいないだろう。もともと文明社会ではうまく生きていけないような人。南方へ戦争になったのは、運命的な偶然。