マンガ水木しげる伝 中

水木しげる『マンガ水木しげる伝』中(戦中編)、講談社漫画文庫、2004


3巻本の、水木しげる自伝。これが中巻で、戦争中のことと、戦後、貸本漫画を描き始めるまでのこと。

戦争中の話はさすがにものすごく、今どきの、本をもとにして描いている戦争漫画とはまったく別のもの。とにかく、ビンタ、食料さがし、排泄その他で毎日毎日終わっていく。ニューブリテン島は、完全に戦線後方で切り離されていたので、援軍も補給もなにもなし。現地自活。

司令官の今村大将はさすがにえらい人として描かれているが、現地の部隊長はいろいろ。しかし、類型的な悪者などは1人も出てこない。本当の自伝なのだから、そういうものだろう。

水木しげるは、これを描いている時点で、恨みつらみなど消え去っているかのよう。晩年の心境など、そういうものかもしれないが、内容の記憶は非常に克明。

戦争が終わってからは、とにかく食べていかなければならない生活。武蔵野美術学校に合格したが、実際には食いぶちを稼がなければならず、それが紙芝居や貸本マンガだったりした。それでも、家を買っているので、それなりに稼いでいたということ。生命力のある人は、どこにいても、自分の生活を成り立たせているもの。すごい人はすごい。