「ストーカー」は何を考えているか

小早川明子『「ストーカー」は何を考えているか』新潮新書、2014


著者の中公新書ラクレの前著にあたる本。こちらのほうが、より体系的。

ストーカーは、「病気」と「病的」の両方にまたがっているもの。つまり、もう治らないような種類のものと、他人からのアドバイス次第で引き返せるようなものと、両方ある。著者は、実際に両方を見ている人なので、その微妙な区別がわかっているが、現実に警察と病院はややこしい境界事例を扱うことにはなれておらず、両者の間に落ちてしまうような事例がたくさんある。

カウンセラーは、自分で依頼してきた人のことは多少はなんとかなるが、そうでない人のことは扱えず、しかも本人に対する負荷がたいへんなので、著者は非常に苦労しているはず。並の人にできることではないだろう。しかも、失敗すると、暴力犯罪になってしまう。

著者を含むいろいろな人の努力で、ストーカー行為に対する法律や警察の立場や社会の見方が変わってきていることは事実だろうが、病気と犯罪の間を取るのは非常にむずかしく、日本では特にそうだろう。気の遠くなるような問題。