朝鮮大学校物語

ヤン・ヨンヒ朝鮮大学校物語』角川学芸出版、2018


「かぞくのくに」の映画監督、ヤン・ヨンヒが書いた、半自伝小説。主人公ミヨンは、いくつかの設定ではヤン・ヨンヒとは違っているが、中のエピソードは妄想を含めて、自分の例から取っているはず。

話は、主人公ミヨンが朝鮮大学校1年に入学してから、卒業して演劇の道に入るまで。といっても、最後に演劇の公演をするくだりは付け足しなので、実質は、大学校卒業でおわり。

ミヨンの恋愛とかははっきり言ってどうでもいいが、この小説のポイントは朝鮮大学校というところがどういうところなのかがわかること。ヤン・ヨンヒは1964年生まれなので、1983年に大学校に入学しているはず。この時期のことを小説にしているだろう。

朝鮮大学校は、本物の北朝鮮世界を日本に作り上げたもの。全寮制、生活総和があり、生活は常に他人の批判にさらされる。卒業後の進路も勝手に選ぶことはできない。これを現代日本でやろうというのだからすごいこと。読んでいても、著者だけがこの環境を拒否していて、周りの学生はまったくこのことをおかしく思っていないことがわかる。

現実に、朝鮮大学校を出ても、ろくな就職先はないことは明らかなので、この学校に朝鮮人が行かなくなるのは当然。しかし、ヤン・ヨンヒがこの学校に行っていたときはそのようには思われていなかった。この学校システムを使って、朝鮮学校教員や、朝鮮総連職員、朝銀職員などが量産されていた。そういうルートに乗っていた人はある意味かわいそうだが、日本社会でそうするのは、本人が決めたこと。