臆病者のための裁判入門

橘玲『臆病者のための裁判入門』文春新書、2012


少額の金額を扱う民事裁判の制度と運用について説明した裁判の本。前半は非常におもしろく、著者自身が扱った保険会社とのトラブル(当事者が外国人だったので、著者が実質的に代理人)についてのてんまつ。これは完全に保険会社の問題(担当者が書類をごまかしていた)なので、簡単に勝てるのかと思ったら、そうはいかないということ。

後半は、日本の裁判制度の問題点、特に少額の金額を扱う裁判やADRの問題点をまとめて扱う。日本の裁判について、若干知識がないと読むのはたいへんだが、それでも非常に役に立つ。基本的に、日本で訴訟の件数が少ないのは、裁判制度が原因。裁判官の数は増えないし、裁判所は、組織的な偏りで、一方の当事者を保護しようとしている。

少額の訴訟は、簡単な手続きでサクサク片付いたほうがよいと思うが、これが簡単にはできないことがある。日本社会のおもしろいけど、笑えない側面。