日本人のための軍事学

橋爪大三郎、折木良一『日本人のための軍事学』角川新書、2018


橋爪大三郎と、元統幕長、防衛大臣政策参与の折木良一の対談本。これは非常によく書けている。

前の部分は安全保障や防衛についての基礎的なことの確認だが、終わりの部分は、米朝首脳会談以後の北朝鮮問題を踏まえて、今後の展開や必要な対策を議論している。

ここは、橋爪大三郎がまともなことを聞いていて、折木良一も専門家の立場ではっきり答えている。結局北朝鮮の時間引き伸ばし作戦にトランプが乗ったおかげで、問題の解決ははるかに面倒なことになり、不安定な状況が一定程度続くということ。

北朝鮮が非核化などする可能性はもともと低かったが、その後の展開でその可能性はさらに下がり、こちらはこちらでできることをしていかなければならない状況。日米同盟の強化や防衛体制の整備だけではすまず、今後の不安定な状況が長期的に続くことも考えて、それに備えなければならない。いままでアメリカ頼りだったことを、ある程度自分でしていかなければならない。

斬首作戦の有効性、限定戦争はできるのか、戦争があったとして戦後の北朝鮮はどうなるか、きちんと答えられていて、好感がもてる。危機感がないと、何も始まらないということ。