あのこは貴族

山内マリコ『あのこは貴族』集英社、2016


いろいろな女のパターンを上手に小説にしている山内マリコの作品。これは買っても良かったが、図書館で予約していたらかなり時間がかかった。それだけ予約数が多かった。

話の内容は、東京に生活する上流に属する階級の娘が、適当に見合い結婚するが、結局うまくいかないというもの。この話のアクセントは、結婚相手の男は、慶応を幼稚舎から出ている同じような社会階層の男で、弁護士から伯父(国会議員)の後継者になることを考えているというもの。

さらに、この男の愛人というのが、慶応を中退して、夜の仕事をしている人で、この愛人と主人公の女がなぜか出会って仲良くなるという展開。

主人公の女(自我のない上流階級の箱入り娘)、愛人(地方出身で慶応に入ったが、夜生活で中退した後、会社勤め)、結婚相手の男(家族の存続以外は考えていない上流階級の男)と、三者が対比されて、その生活や家族関係が描写されていて、非常におもしろい。

結局「人形の家」みたいなことになるのだが、その結末よりも、結婚相手の男の鈍感さや、主人公の家族の俗物ぶりが容赦なく描かれていて、そこが読みどころ。こういう人は一部にいるもの。まあ、ただの俗物だが、そういう人が上流階級を形成しているものなので、そこをはっきりと書いているのがよい。