本物の読書家

乗代雄介『本物の読書家』講談社、2017


驚くべき本。この本をなんで持っている(図書館で借りた)のか、忘れてしまったが、なんとなく借りたわけではないので、書評で読んだということのはず。

この著者、1986年生まれとなっているので、30歳をちょっと越えたところ。しかし、完全にわかってらっしゃる方。このタイトル(著者自身も書いているが、かなり勇気をふるわないと、このタイトルはつけられない)といい、内容といい、雑誌に載った中編が2つだけなのだが、すごすぎる。

どうやってこういう人間ができたのかといえば、もう勝手にやっていたので、できたとしか言えないものだろう。法政大学社会学部メディア社会学科卒とあり、二編目の「未熟な同感者」は、おそらく個人的な体験をもとにしていると思うが、こういう人間が人に食いつけるというのがたいへんなこと。

人気の出るようなものではありえないのだが、こういう本を買い、読める人はいる。著者が小説を書き続けられればいいけど。