日本的雇用慣行を打ち破れ

八代尚宏『日本的雇用慣行を打ち破れ 働き方改革の進め方』日本経済新聞出版社、2015


ガチの規制緩和論者による、「働き方改革」の本。

日本の雇用慣行がいかに「ダメ」かという視点に立って、雇用流動化を主張している。この点ははっきりしている。主張が勝手に展開しているというものではなく、きちんと理屈が成り立っており、労働時間規制、女性管理職、定年制、解雇ルールの明確化、派遣労働者、有期雇用の無期転換、外国人労働者、「岩盤規制」、日本企業の人事制度といった主要なポイントで、現在の日本の労働法制の問題点を指摘している。

基本的に著者の問題認識はそんなに間違ってはおらず、高度成長期に特定の条件下で成立していた労働規制をいつまでも続けることはできず、それはやめていくしかないという考え方が根本的に間違っているとは思えない。

しかし、そうだとしても、現在の労働規制は、今の大企業の正規雇用者を守っているので、それをそのままやめてしまうということはできないし、そんなことが起これば大混乱になるだろう。変えていくとしても、多少時間をかけて、ゆっくり変えることしかできない。

基本的な理屈を知るにはよい本。処方箋としての有効性は別途に考える必要がある。