如是我聞

太宰治「如是我聞」


自殺直前まで書いていて、途中で死んでしまったので、これが絶筆になった評論。評論というには、あまりにも筆鋒が激しく、槍か刀みたいなもの。

攻撃されているのは志賀直哉。この時期にはまだ存命で、文壇の長老だが、志賀直哉が太宰の作品を貶しているところを引用して、いちいち反撃している。ただの反撃ではなく、志賀直哉の作品や、太宰への評価がいかにくだらないか、さらに志賀直哉という人物自体に存在価値がないという文章で、これが文芸誌に連載されていたというのが大変なこと。読み手はかたずをのんで読んでいただろう。

志賀直哉以外も、外国文学者だの他の大家も容赦なく攻撃(志賀直哉以外には名前が出ていないが)されていて、人がたくさんいるところで青龍堰月刀を振り回しているようなもの。ポンポン首が飛んでいるような感じ。適当に振り回しているのではなく、ちゃんと狙って振っており、一閃するごとに確実に誰かの首が飛んでいる。

これきりで死んでしまったので、未完で終わりだが、これで終わるのは本当に惜しく、あと100人くらいは斬ってから死んでほしかった。死に際にこの馬力が出せたのだ。ほんとうにおそろしい。