更級日記

更級日記』(川村裕子編)、角川学芸出版、2011


角川ビギナーズ・クラシックスに入っている版。当然抜粋。しかし、これはよかった。

藤原孝標女は文学オタク。昔から文学少女というのはこういうものだったのだろうという人。物語が読みたいからといって、それで等身大の仏像はなかなかできない。

宮仕えに出られて喜んでいたら即、結婚させられたとか、結婚した後で、理想の男が現れた(何もせずに終わり)とか、夫の死とか、いろいろと波乱万丈、というほどまでにはいかないが、文学少女の人生は思ったようにはいかないもの。

結婚生活を続けて、だんだん落ち着いてきて物詣や、育児や夫の出世に気持ちがいくようになったところで、夫が死ぬ。作者のダメージは悲惨。文学少女の末路だわ。

このシリーズに収載されているので、現代語訳、原文、解説がつくほかに、作品全体の解説、年表、系図、登場人物一覧がついている。非常に親切なつくり。編者の川村裕子は、女子大で国文学を教えている人だから、こういう配慮が行き届くのだろう。これがあるだけで読めるようになる人もいるはず。