雌に就いて

太宰治「雌に就いて」


これは掌編。しかし傑作。というか、太宰の実際の生涯を知っているから、ただの創作ではないことがわかる。

主人公と客は、客の女についての話をしている。貧しい育ちの、よくわからない女。客は、この女と死にたい。というか、なんでもないようなきっかけで、実際に客と女は情死する。主人公は生き残る。

主人公と客とは両方とも、太宰の姿。この話は実際に心中して生き残った太宰が書いているから、胸に響く。太宰は生き残った自分を悔いているのだが、結局は死んでしまうのだ。

死にたい人にフラフラと惹き寄せられていく人は現在でもいるもので、それは昔も変わらなかったということだが、そういう人はお互いに引き合うものがあるということ。