北朝鮮で何が起きているのか

伊豆見元『北朝鮮で何が起きているのか 金正恩体制の実相』ちくま新書、2013


2013年半ば、金正恩が指導者になってから、1年半の時点での、著者による北朝鮮ウォッチングの内容とその分析に関する本。

著者の観察では、金正恩の政策は、基本的には金正日時代の延長線上にある。核、ミサイル開発が、アメリカを交渉のテーブルに引き出すための材料であるということも同じ。

この時点では張成沢粛清は起きていなかったが、軍や労働党の指導部を頻繁に入れ替えていたのは、金正日に忠誠を誓っていた幹部を、自分に直接忠誠を尽くす幹部に入れ替えるため。すべてのことは、金正恩体制を盤石にするために行われている。

それでは現在振り返ってみて、この見方はどうなのか。著者は労働新聞や北朝鮮発表の細かい分析を手がかりに、北朝鮮の行動を観察しており、その部分が大きく間違っているとは思えない。しかし、アメリカを交渉に引き出すことが北朝鮮の目的だということが、もし現在でも同じであれば、北朝鮮の行動があまり大きなリスクを踏みすぎていることは事実。しかも、核、ミサイル開発が現在のように進展してしまうと、もはや交渉の機会があっても、これを途中で放棄することは困難。

アメリカと実際に交渉したがっているという分析は本当であっても、それが北朝鮮の核、ミサイルの放棄を受け入れることには、つながらないだろう。この本が書かれた時点から現在までの間に、北朝鮮の方針が大きく変わったのか、変わってはおらず、この本の延長線上に現在があるのかは、判断がむずかしい。