黙殺

畠山理仁『黙殺 信じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』集英社、2017


選挙で、「独自の戦い」をしている泡沫候補ルポルタージュ。著者は「泡沫候補」という言い方を好まないので、「無頼系独立候補」と呼んでいる。

マック赤坂から始まって、いろんな泡沫候補が紹介されている。特に前回、2016年都知事選は、21人立候補しているが、有力3人(小池、増田、鳥越)以外を全部取材している。著者は、この「有力候補以外を対象とした選挙取材」を続けて20年。これだけやっていれば、いろいろとわかることがある。

著者が一番問題としているのは、「マスメディアによる無視」。とはいえ、これはメディアの編集権というものがあるし、テレビニュースでは候補者一覧表を出すことにしている。この問題について、テレビ局を訴えた訴訟はすべてテレビ局の勝ち。だから仕方ないのだが、この本では、かつて朝毎読の3紙は、泡沫候補排除のための協定を結んでいたことがあり、朝日は、有力候補以外を「まじめな候補」、「売名その他のまじめではない候補」に分けていたことを紹介している。つまり当選見込みが薄い候補がすべて泡沫として一括扱いされているのではない。これは確かに公平ではない。

また、泡沫だということと、まじめにやっていないのは別のこと。マック赤坂のことはかなり詳しく書かれているが、あれだけ選挙に出ているのだが、単に惰性でやっているのではなく、彼は彼なりに考えて、一票でももぎとる方法を工夫している。ただ、現実に当選に近づくことよりは、政見放送に出ることが目標になっていることは事実。

現実に、2016年都知事選では、有力3人以外に、上杉隆氏と桜井誠が10万票以上取っている(マック赤坂は51000票余)ので、それなりの努力と知名度があれば、票は取れる。都知事は無理でも、区議ならなんとかなる可能性はあるだろう。現実に、中川暢三は兵庫県加西市長には当選しているのだ。一人でやるのではなく、もっと仲間を集めて地道にやれば、いくつかの地方議会で拠点を作ることはできるはず。

著者の関心はキャラの立った人になるので、そういうミニ政治勢力にはあまり関心はないのかもしれない。それでも、ポスター貼り、供託金問題など、立候補に伴ういろいろな苦労やコストはよくわかった。また、長年地道に取材していなければ書けない本。この努力は貴重。