弱者の戦略
稲垣栄洋『弱者の戦略』新潮社、2014
『オスとメスはどちらが得か?』の著者による生物学本。内容はかなりの程度かぶっている。しかしそれでもおもしろいし、この本が提供しているネタもあるので、そんなに問題はない。
タイトルは、生物が取っている生き残り戦略のこと。強者と弱者の戦略的な違いについて述べている。SMAPの歌を引用して著者が言っていることは、生物はそのニッチにおけるナンバーワンでなければ生き残れない、しかしそれぞれのニッチは互いにオンリーワンである、ということ。
種を超えた「助け合い」というものはなく、結局すべては生存競争の結果で決まっている。しかし、すべての領域における単独の勝者というものはないので、生存競争はニッチごとにしか決まらない。そこで勝てる種は勝者だが、勝てなければ消滅というわけではなく、別のニッチを探してそこで生き残ろうとする。
「共生」という言葉を著者は使っていないが、それがあるとすれば、みんなで仲良くというものではなく、生き残りへの努力の結果としての多様性である。著者は、人間に直接適用しようとはしていないが、人間も生物であり、勝者の戦略と弱者の戦略があるだろう。