オスとメスはどどちらが得か?

稲垣栄洋『オスとメスはどちらが得か?』祥伝社新書、2016


これは非常におもしろかった。生物の生態戦略みたいな本。

性別はなぜ2種類なのかということから始まって、生物が遺伝子を残すために取っている戦略の多様性を説明している。性別の基本はメス。メスの卵を作って育てるコストは大きいので、メスの基本的な機能はそこに特化している。

逆にオスは、精子(小さく、簡単に作れる)を作ってばらまくことがその役割。メスに精子をもらってもらわなければ、自分の遺伝子を残せない。だから、オスは選んでもらう側。メスが選ぶ側。生物ではオスが目立つようにできている種が多いが、これはオスが「モテないといけない」から。メスはどのオスが適切なのかを判断するだけでよい。

オスの攻撃性もこれで説明できる。オスの攻撃性は、他のオスに対するものと、ほかの生物に対するものに分けられるが、いずれにしても、メスの遺伝子を独占し、自分の子を保護するためのもの。

一夫一妻か、一夫多妻か、乱婚か、なぜ近親婚や自家受粉が避けられるのか、浮気(つがい外交尾)の有効性、少産と多産、オスの子育てが少ない理由など、いろいろなことが簡単な理屈で説明されている。

非常にわかりやすいし、婚姻・交尾の多様性とその理由、性別が形態や行動に反映することの理由が明快に説明されている。この視点は社会行動や制度においても基本になるはず。