保守の遺言

西部邁『保守の遺言 JAP.COM衰滅の状況』平凡社新書、2018



先日自殺した西部邁の遺著。この本の原稿書いた時点で、後は4回分のテレビ収録が残されているだけで、その後自殺すると書かれているので、本物の遺書と言うことになる。

個人的に、自殺を自死とか自裁とか表現するのが好きではないので、この言葉が何度も書かれている本はあまり好きにはなれない。とは言え、本当の遺著であり、宣言通りに自殺しているわけなので、単なる他人の感傷と切って捨てるわけにはいかない。

内容は、これまで西部邁が書いてきたことと同じで、アメリカへの従属が気に入らないと言う話と、日本社会批判。特に目新しいことを書いているわけではない。

最後の部分は、先年亡くなられた奥さんへの感情と感謝なので、これについては、よほどの気持ちがあったのだろうと思う。しかしこれも、『妻と僕』という本で書かれているということなので、詳しくはそちらを読むべきなのだろう。

どうしても死にたいので死にますという人を止めることはできないし、自分の体が動かないので、口述筆記しかできず、娘に迷惑もかけられないということなので、単に格好をつけるためにしたことでもないが、読んでいて、遺書なら遺書として、別の書きようもあるのではないかと思う。

著者は、本もたくさん書いたが、人としておもしろい人だったという評価をされているのて、著者の自叙伝の方も読むつもり。何にしても、ご冥福を祈るばかり。