平安朝の生活と文学

池田亀鑑『平安朝の生活と文学』ちくま学芸文庫、2012



平安時代の生活や習慣を説明する本。底本は1952年刊行とあるので、それなりに古い本。

出てくる事項が非常に多く、それぞれの項目で文学作品の引用が頻繁にあるので、サクサク読める本ではない。というか、これほ読者がすでに源氏や枕草子をあらかじめ読んでいることを想定して、その中に出てくる物事を改めて説明するためのもの。

昔の古文の授業がちょうどこんな風だった。源氏も枕草子もほんの少ししか進まなかったと思うが、よりましや、方違えの説明を細かくされた。あれは能を見るときに知らないと困る事項をていねいに説明していたのだと、今はわかるが、当時はよくわからないことだらけだった。

あれは当時の自分がそういうものだと思っていたから聞けたのか、話す先生の語りがよかったのか、よくわからない。

結婚のところで、著者が強調してあるのは、なんでもし放題に見える源氏のありさまは、女の方の父や親族が了解ずみだからできることで、乱倫というものではないということ。どこの誰かもわからない男がいきなり寝所にはいってきたら大変なので、それはその通り。顔がいいとか、歌がいいとか言う前に、いろいろとすばらしい背景があるからモテている。心せねばならないこと。