花岡ちゃんの夏休み

清原なつの『花岡ちゃんの夏休み』早川書房、2016


これは、清原なつののりぼんコミックスがハヤカワコミック文庫に入り、それが電子化された本。電子化されたおかげでこれがいつまでも読めるとはありがたい。

古い絵柄で、描線もそんなにきれいではないが、これをコミックで買ったときには非常に感動した。りぼんの他の作家の作風とはぜんぜん違った。初出一覧をみると、「グッド・バイバイ」が著者の第一作で、『りぼん』1976年10月増刊号。だいたい1977年から81年にかけて書かれている。

描き下ろしの「みやもり坂の頃の事」がついていて、これは単行本発行時に描かれたものだろう。これがついているのが、いちばん貴重。著者が金沢大学の学生だったことがわかるし、このマンガが学生時代に休み期間を利用して描かれていたこと、たぶん著者は理学部(化学科)だったことがわかる。

著者は、その後化学分野の研究職につき、その後も長く漫画家活動を続けていったのだが、その出発点は、「変な自分を受け入れてくれる相手との恋愛」。これが非常に受けていたことが、「みやもり坂の頃の事」でわかる。地味っぽい眼鏡の女の子も、今は当たり前だが、これが少女漫画に出てきたことがめずらしかった。

1977年くらいに学生だったのだから、1950年代後半の生まれということになる。以前、何かのウェブ記事で、「本物の清原なつのに会った」という記事を読んだことがあるが、まだお元気に活躍されているだろう。単行本は基本的に電子化されているので、ぼちぼちと読んでいく。