役に立たない読書

林望『役に立たない読書』集英社インターナショナル、2017


林望の読書エッセイ。さすがだわ・・・という言葉しか出てこない。

せこい目的のために読むな、ちゃんと買え、ゆっくり読め、再読の機が熟した時に読め、等々、おっしゃるとおりですねというもの。

特に「人から言われて本を読むのはやめろ」というのは本当にそのとおり。学校の授業で読まされた本は意味がないし、読書会はただの暇つぶし、自分が読みたい時に自由に読まない本など、意味はないということ。

この本で唯一実用的なのは、古書にまつわる部分。いまどき、古書はネットで買えばよく、古書を買うことは非常に実用的なことになった。そのサイトも著者は使っているのだが、それでも著者はインターネット以前の人だから、古書店との付き合いも大切にしている。古書店との関係は、やはり人間関係なので、長く特定の古書店に通っていると、思わぬ掘り出し物を紹介してくれたり、本との出会いを仲介してくれたりする。ありがたいこと。著者は東京に住んでいるから、これがやりやすいのだろうが・・・。

古典文学、朗読、電子書籍などにも言及しているが、いちいち納得させられる。読書の意義は、実用的なこととは別の次元にあること。これをはっきり言えるのは、著者のほかにはほとんどいないと思うが。