罪と罰を読まない

岸本佐知子三浦しをん、吉田 篤弘、吉田 浩美『罪と罰を読まない』文藝春秋、2015


以前新聞の書評欄で見たのだが、読んだのは、人に紹介されたから。めちゃくちゃ笑えた。

この4人は『罪と罰』を読んだことがないのに、内容を適当に想像して読書会をするという本。ぜんぜん知らないわけでもなく、適当に内容を(最初と最後の数ページとか)教えられて、後はなんとなく知っていることからの想像で言っている。

ドストエフスキーは「ドスト」だし、ラスコーリニコフは、「ラスコ」。登場人物の名前はロシア語の長い名前を覚えられないので、いいかげん。だいたいストーリーがよくわかっていないのに、内容をああだこうだと適当に言っているのが非常に笑える。参加者は、翻訳家、小説家、書籍デザイナーで、有名人だが、『罪と罰』を読んでいないからみっともないとか、誰も思っていない。

最後に、実際に読んでみた後の感想を語っているが、これはまとも(あたりまえ)。というか、きちんと読めている。というか、この小説が編集者の手が入ったことはないはずというのは当たり。他人がドストエフスキーの本に手を入れたら、こんな風にはできてないだろう。

傑作なのは、三浦しをんのあとがき。「読む」は終わらない、「読む」は読まないうちから始まっている、だから「読む」には終わりも始まりもないということ。これは至言だと思う。