覇者の戦塵1945 戦略爆撃阻止

谷甲州『覇者の戦塵1945 戦略爆撃阻止』中央公論新社、2017


『覇者の戦塵』シリーズの新しい巻。これが1年9ヶ月ぶりの新刊で、通算40巻目。第1巻は1931年で、やっと1945年まで来た。

いったいいつ終わるのかというと、「実際には三年もかけるつもりはない」と言っているので、2019年には終わるつもりだということになる。あと2巻は出る。「戦後世界」がどうなるかについての、展望も示すのだという。これはありがたい。

この巻でも、秋津大佐の工作活動や、秋津を目標にした暗殺計画、反乱があって、内容豊富。もう戦争終結工作をしなければならないので、そのための国内対策も必要になっている。

元南京派の「閻列山」将軍もおもしろそうなキャラ。戦後のことを見据えて、日本に家族や一党ごと亡命しようとしてくる人物。

夜間戦闘機B-29の戦いは相変わらずおもしろい。40巻もある長編小説で、ここまで緊張感が持続できるのは、著者の筆力。架空戦記もので、10年後、20年後に読まれているのは、たぶんこのシリーズだけだろう。