太宰治『葉』
これは超絶的な傑作。やはり第一短編集『晩年』の中の作品だが、どうしてこんなにすごいものが書けるのか、わからない。
はっきりいって、話を追うのがたいへんな小説。しかし、ひとつひとつのエピソードがみな立っており、一貫したストーリーなどは別に追わなくてもいい。それらのエピソードが全部おもしろい。
それに言葉がすごい。「たった一行の真実を言うために、百頁の雰囲気をこしらえている」のが小説だと。この言葉、簡単には出ない。
『晩年』の青空文庫版は、新潮文庫1998年7月20日のものが底本だが、103刷。しかも別のところに、太宰自身が、初版500部、それが捌けるまで5年かかったと言っている。価値のある作品は、いつまでも隠れてはいないということ。