魚服記

太宰治「魚服記」


これも『晩年』所収の短編。女が龍になるかとおもいきや、鮒になってしまうという話。ぜんぜんつまらないというわけではない。短くて読みやすいし、趣向はおもしろい。

しかし、『晩年』の別の作品と比べると、そんなにおもしろいわけではない。微妙なところ。別の作品があまりに傑作揃いだから、かすんでいるのか?

それでも、気の強い主人公のスワのキャラはいい。非常に意志が強く、田舎の茶店の娘には収まっていない女。そういう女が、鮒になって、滝壺の中にのまれて消えてしまうというのも、ちょっといい趣向ではある。そんなにすばらしいとはいえないが、ちゃんと味のある短編。