眉山

太宰治眉山


短編だが、超絶的な傑作。こんなものが書けるのか。

トシちゃんこと眉山のバカっぽさ。太宰が馬鹿な人間を心底軽蔑していたことがよくわかる。それにしても、「基本的人権=人絹」のくだりはかなり笑う。いまは人絹といっても通じないのだろう。

最後のところで一発逆転されるのだが、ここが本当に切ない。バカにしていた眉山の行動はことごとく愛情の現れ。けっきょく眉山は戻ってこないことがほのめかされる。これはつらいわ。

勘ぐれば、太宰本人もこういう女を見たことがあったのかもしれない。さんざん笑わせて、最後にグサッと刺してくる。すべてがきちんと設計されている。おそろしい。