シニア左翼とは何か

林哲夫『反安保法制・反原発運動で出現─ シニア左翼とは何か』朝日新書、2017


もはや左翼の中軸は老人。今ではだいたいわかってきたことだが、SEALDsとかママの会とか、マスコミが言っているだけで、実際にはそんなの圧倒的な少数派。やたらといるのは老人。

著者は、「一貫組」「復活組」「『ご意見番』組」「初参加組」にわけているが、この比率が書かれていない。著者は教育関連のライターで、社会調査なんかは詳しくない。ここは残念なところで、数字で分析している部分がほとんどない。

とはいえ、シニア左翼のおもしろ生態がわかるというのはいいところ。これを見ると、警察を挑発したり、過激な行動に出ようとしているのは老人で、それを止めているのが比較的若い人ということになっている。老人は昔学生運動をやっていたので、警察とぶつかるのが楽しいのだ。

社会、なんでもそうだが、人口が非常に重要。団塊の世代は、現在70歳前後になっていて、この層が非常に多い。また、この層は、若い時に反政府運動の高揚を見ていた人達。だから、「昔取った杵柄」で、デモ参加に抵抗がないし、簡単に盛り上がれる。国会前デモは、彼らの戦友会というか、思い出パーティー

学者でも、活動家でも、もはや多くは老人。その人達が青春時代を歌っている。といっても、老人だけでは寂しいので、SEALDsとかの若い人を前に立てて後ろから喝采を浴びせるというもの。田中美津とか、瀬戸内寂聴とか、アホとしか思われないが、パワーだけはあるのだろう。長渕剛とか、明らかに何も考えずに感情で動いている人。芸術家なんて、そんなものだし。しかし、老人力というものはおそろしい。この力がもうちょっと建設的な方向に向かえばいいのに、なかなかそうはいかないところがむずかしい。