安藤忠雄展 挑戦

安藤忠雄展 挑戦」、国立新美術館、2017.11.19


この前に来たときには時間の都合でいけなかった安藤忠雄展。しかしこれはすごかった。今年は、柳沢淇園の次によかったのがこれ。

チケット売り場にたくさん並んでいたので、どうせ「新海誠展」のほうだろうとおもっていたら、さにあらず。ほとんどの人は安藤忠雄展目当てで来ていたのだ。中は、人でいっぱい。国立新美術館の展覧会で、これほど人が来ていることはめずらしい。

中にあるのは、安藤忠雄のこれまでの作品。スケッチや図面もあるが、基本は建築模型と映像。非常にわかりやすい。最初のほうには住宅建築が置かれているのだが、そこに一番人が集まっていた。ほとんどの住宅で、施主のひとことが書かれていて、これがおもしろい。

さらにおもしろいのが、安藤忠雄自身のひとこと。これはオーディオガイドに入っている。このオーディオガイドが非常におもしろく、ほとんどの言葉は安藤自身が吹き込んでいる。これが、聞いているだけでおもしろい。

住吉の長屋」は、施主から「寒い」といわれ、「もう一枚シャツ着てください」と答えたら、「もっと寒かったら」といわれ、「また一枚シャツ着てください」と答え、「まだ寒かったら」といわれて、「あきらめなさい」と答えたという話。安藤忠雄は、普通の便利な住みやすい家など目指していないのだ。こういう俺様な方だから、自分の本当にやりたいことをやれるということ。

後半は、公共建築その他の大きな建築。それも、「無理だろう」と安藤忠雄が思ったものを、施主の情熱的な頼みで引き受けたとか、総理大臣に電話して話を通したとか、とにかく安藤忠雄自身の力で持っていったというもの。建築家は、巨大なものになってくると、ただの設計だけではできず、施主や政府、関係者との相談や了解が必要なので、政治力や人間力が必要。これができていないとプロジェクトはできない。

人との交際については、「ぼくは危ない奴だと思われていて、みんなそろそろとしか近づいてこない。でも、危ない奴だと思われていなければ、そもそも近づいてこない」と言っている。

昔、ポンピドゥーセンターでコルビュジエの展覧会を見たが、あの展覧会にこれほど人が集まるのかとおどろいた。しかし、安藤忠雄はそれ以上。日本人がフランス人を超えたとは思わないが、安藤忠雄コルビュジエと堂々と勝負できるくらいの人。えらい人を見ると、じぶんの心が気持ちいい。