猿ヶ島

太宰治『猿ヶ島』


これも『晩年』に入っている作品。最初の短編集からどうしてこんなにおもしろいのか。

主人公は猿。猿ヶ島の猿なので、人間に観察されているのだが、当然猿が人間を観察してる。「あれは学者と言って、死んだ天才にめいわくな註釈をつけ、生れる天才をたしなめながらめしを食っているおかしな奴だが、おれはあれを見るたびに、なんとも知れず眠たくなるのだ。」のくだりには笑い転げた。まあそんなもの。

猿同士、同性でも毛づくろいということをしているのだが、これが猿っぽくなく、同性愛テイストで、非常にいいところ。本物の同性愛も、こんな風になるのか。自分はそうでないので、よくわからない。

最後、猿ヶ島から逃げてしまうのだが、この猿ヶ島、動物園のサル山ではなく、本当の島ということになっているので、どうやって逃げたのか、見当もつかない。サクッと締めていて、非常に気持ちいい。