友達がいないということ

小谷野敦『友達がいないということ』ちくまプリマー新書、2011


あっちゃんの友情についての本。あいかわらずおもしろい。

基本的には、「友だちがいないのは、普通でしょ」という趣旨。友情の概念は昔から、ギリシャ時代にも、中国の古い時代にもあったが、昔の友人関係は社会階層が同じ人の間でしかできなかった。いろんな人が混じっている社会で友人関係はむずかしい。あっちゃんは東大に行った時点で人間関係がリセットされてしまい、東大生はプライド高くて、マウンティングの仕合なので、友達はできなかった。

あっちゃんの説では、前近代の日本には、男同士の友人関係はなく、あったとしたら同性愛関係。同性愛といっても、気持ちだけでなんとなくそう思っているのと、実際に同性でセックスするのとは違うが、前近代日本は、社会として、同性愛関係が当たり前ということがあった。

しかし、いまどき、同性愛関係が社会的に押し付けられることはないし、異性間の恋愛関係も、ある人はあるし、ない人はない。どっちからもこぼれてしまう人はたくさんいる。あっちゃんが非常に苦労してきたのは、女性関係だけではなく、友人関係も含めてだったということで、確かにたいへんだ。

この本がいいのは、友情や恋愛について、上っ面の説教は役に立たないことをはっきり言っていることで、「自分が真心を持てば、相手も」というようなことはない。なくてあたりまえ。だから、できるなら結婚したほうがいいし、それができない人はなんとか、人間関係を耐えるしかない。水泳ができない人を海に投げても死ぬだけ。