復讐手帖

亀山早苗『復讐手帖 愛が狂気に変わるとき』扶桑社、2017


これは怖い本。恋愛関係で裏切られた女がどのようにして男に復讐したかというエピソード集。ちょっと笑える話もあるが、そんなほっこり話は少なく、大半は、背筋が寒くなるようなレベルの話ばかり。

これは怖いなと思ったのは、10年付き合ったミュージシャンに振られた女(30歳)の話。男がメジャーデビューできるかもしれないとなった時に、「女性関係を整理しろ」と会社に言われて、振られた。そこで女がしたことは、男のPCに入って、楽曲データを全部消し、それらを外付けHDDに移して持ち出した。男の態度次第ではHDDは返すつもりだったが、会社の人が来て、「他にも女はいたが、PCを触れる能力があるのはあなただけ」と言われたので、完全にキレてしまい、外付けHDDも廃棄。男のメジャーデビューは結局できなかった。

あと、家庭内別居の話も怖かった。最初に付き合った男と結婚、一筋で来たのに浮気されたのがわかって、完全にキレ、家庭内で夫を完全に無視し続けた。夫が謝っても許さず、結局夫は北海道に単身赴任。しかし、許すつもりはないらしい。

だいたいこういう話になっているケースは、結婚しているかどうかは別として、関係が非常に長く続いていた場合。「わたしの人生を返せ」というようなもの。しかも、女の復讐心は、男ばかりか、自分の気持がズタズタになっても止まらない。最後には、なぜ自分が復讐しているのかもよくわからなくなっていたりするが、それでも怒りだけはあるというもの。

人間の心で一番恐ろしいのは、やはり怒りと憎しみの歯止めが外れる時。自分の愛情が裏切られたというのは、このことが起こる、一番ありそうなきっかけになる。だいたい怒りは男に向かっているが、女に向かう場合もあり(その場合も男のことを許すわけではない)。男(または女)の人生を滅ぼすまでやり続ける例が多し。浮気の結果は恐ろしい。