言ってはいけない─残酷すぎる真実─

橘玲言ってはいけない─残酷すぎる真実─』新潮新書、2016


安藤寿康の本がおもしろかったので、こちらも読んでみたが、おもしろかった。しかし、この本、行動遺伝学の部分は、安藤寿康の本をまとめていると書いている。それだったら、元ネタにされた安藤寿康が「便乗本」を書くのはあたりまえ。

しかし、この本は、いろいろな心理学、社会心理学系統の研究本から、エピソードをピックアップしてまとめたものなので、ここで引用されている本の説が、全部信じていいものなのか、ちょっとためらうところがある。

例えば、大企業の業績がCEOの顔で決まるという説。顔の形がテストステロンの量を決めているので、それが影響するというのだが、ほんとですか?同じく、男性で顔が醜い者は雇用面接で弾かれるが、その理由もテストステロンを過剰に浴びると、暴力的な外観になるからだという。これもちゃんと調査データを見ないと納得はできない。暴力的な外観と醜い外観はちょっと違うのでは?

しかし、非常に納得がいった部分もあり、それは子供の成長に与える親の影響。家庭教育や早期教育はあまり役に立たず、親の影響は、子供の環境、つまり学校や地域を選ぶことに集中するという。子供は、自分の仲間に対する関係で、自分のキャラクターを決めていくので、これは非常にわかる。社会性が持てないように育ってしまうと、のちのち苦労するということ。