東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる

兵藤二十八『東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる』講談社、2017


時節柄、過激なタイトルが売れるのだが、そういうものなので、しかたがなし。というより、こういうことも実際にあり得ることなので、タイムリーといえばいえる。

この本は主に中国が日本に核攻撃するとすれば、という想定に基づいている。付随的に北朝鮮の核攻撃も考えるというもの。想定が現実的にどの程度あり得るかはともかく、理屈はわかっておくにこしたことはない。

中国の場合、まずほとんどの核弾頭が即応状態にない。平時にはユニットにばらして別に保管。1500以上の弾頭を即応状態にしている米ロとは違う。とはいえ、すべてが即応状態にないのかどうかはわからない。

ICBMの総数は隠蔽されていないので、わかっている。これはあえて隠していないということ。日本、インド、台湾などを目標にした中距離核は旧式の東風4が10、新型の東風21が134。日本に使えるものはミサイルの数では数発。使用後のアメリカやロシアへの対応用に残しておかなければならないので、10基使うなどということは無理。

北朝鮮は弾頭が10と判断している。根拠は不明。そんなに少なければ、日本に向けられる数は少ないはずだが、威嚇で使うことはあるかもしれないと言っている。実際に使用可能な核ミサイルがあることを実証することが目的。

しかし、そういうことができたとしても、それ自体がアメリカの報復攻撃の理由になるので、実証のために地上の目標に撃ってくるなどあり得るのか?あるとすれば、今撃たなければ、アメリカの先制攻撃で全滅させられることが確実という場合だろうと思うが。

勉強になったのは、空中爆発する場合と、地表爆発する場合の被害の態様の違い。空中爆発の方がもちろん被害は大きいのだが、直接被害と放射性降下物が降ってきている期間の被害だけで、それが終われば後はそれほど問題ない。降下物は雨で流される。しかし、地表爆発の場合は土がガラス化してそれが放射能を持つから、長期で使えなくなるということ。これまで地上で実験が行われた場所の跡地に人が近寄れないのはそのため。土壌を除去するといっても、クレーターの大きさを考えれば作業が困難で、土壌を廃棄する場所もないので、除染はできないという。爆発時の火球が地上に接触しているかどうかが問題。