リベラルという病

山口真由『リベラルという病』新潮新書、2017


著者は東大法学部を出て財務官僚になり、ハーバードロースクールを修了して、現在弁護士という人。勉強法の本を数冊出している。

この本は、主にアメリカの司法で、リベラル対保守がどのような形で対立しているのかという問題を明らかにした本。リベラルの世界観の骨組みになるのは、人種間の平等、個人の選択権。これをひたすら追求していくことが、アメリカのリベラル。対して保守(コンサバ)は、伝統的価値観を守り、政府の役割拡大を認めないことを主張する。これがぶつかっているのがアメリカ。

それに対して、日本ではリベラル対保守の対立軸がはっきりしない。民進党イデオロギー的な一貫性はない。自民党は利益分配に終始し、アメリカの分類ではリベラルとほとんど変わらない。役割上財政均衡論を主張するのは財務省だけ。それはバランスをとっているだけで、価値観上の対立があるわけではない。日本政治はイデオロギーがはっきりしない世界。

日本社会でダラダラと自民党政権が続き、二大政党制が立ち上がらない理由のひとつはこれ(対立軸がはっきりしない)だから、著者のいっていることはそのとおり。アメリカのイデオロギー対立を日本にもってくるには、そのための基盤がない。もともと価値観の対立軸がないし、エスタブリッシュメントも学歴のみでしか決まっていない(アメリカだと、そこに穏健な価値観という要素が入る)。

アメリカの司法的対立についていろいろわかって勉強になった。